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2021年 4月号

 

先願登録商標と同一・類似の後願登録商標の使用が先願登録商標の侵害に該当するか否かについて


 - 大法院2021.3.18.宣告2018ダ253444全員合議体の判決を中心に
 
商標権者は登録商標について独占的使用権を有する。ところが、商標法第92条は、登録商標の使用が先に出願された他人の特許権・実用新案権・デザイン権、先に発生した著作権と抵触する場合、先権利者の同意を得なければならないと規定して、商標権者の積極的効力を制限している。しかし、上記第92条の規定は、商標権と商標権が抵触する場合を規定していないので、先願登録商標と同一・類似の後願登録商標の商標権者が先願商標権者の同意を得ずに自分の登録商標を使用した場合、先願登録商標の侵害に該当するか否かが問題となる。
 
1.過去の大法院の立場
商標権と商標権が互いに抵触する場合、後願登録商標権者が先願登録商標権者の同意なしに自分の登録商標を使用した場合でも、先願登録商標の侵害を構成しないものとみていた。(大法院86ド277判決)
ただし、後願登録商標が無効審判により無効確定した場合、当該商標権は初めからなかったものとみなすため、後願商標権者の使用行為は最初の使用時点に遡及して侵害に当たることになる。大法院の判例は、後願登録商標が無効確定した場合、①民事事件においては、被告が原告商標権の存在を知らなかったという点を正当化できる事情があることや、自分が使用する商標が原告登録商標の権利範囲に属さないと信じた点を正当化できる事情があるということを別途主張・証明できない以上、「最初の使用時点」から不法行為による損害賠償責任を負うと判示しており(大法院2013ダ21666判決)、②刑事事件においては、「無効審決確定後」の行為について刑事侵害罪を認めていた(86ド277判決)。
 
2.大法院2018253444全員合議体の判決
(1)事実関係
 
(2)判決要旨
商標法は出願日を基準として抵触する商標間の優先順位が決定され、これに違反して登録された商標は登録無効審判の対象となる。また、商標法第92条では、登録商標の使用が先に出願された他人の特許権・実用新案権・デザイン権、先に発生した他人の著作権と抵触する場合、先特許権等の権利者の同意を得ずにはその登録商標を使用することはできないと定めているため、後願商標権者が先特許権等の権利者の同意を得ずにその登録商標を指定商品に使用すると、先特許権等に対する侵害が成立する。
このような商標権の効力や先願主義、他人の権利との関係等に関する商標法の規定・趣旨に鑑みると、商標法は、抵触する知的財産権の相互間で先願又は先発生の権利が優先することを基本原理としていることが分かり、これは商標権間の抵触関係にもそのまま適用されると見るのが妥当である。したがって、商標権者が商標登録出願日前に出願・登録された他人の先願登録商標と同一・類似の商標について登録を受け、先願登録商標権者の同意なしにこれを先願登録商標の指定商品と同一・類似の商品に使用した場合、後願登録商標に対する登録無効審決の確定如何にかかわらず、先願登録商標権に対する侵害が成立する。
 
3.検討
今回の大法院判決は、従来の大法院判決のうち、「後願登録商標を無効とする審決が確定するまでは、先願登録商標権に対する侵害とはならない」という部分を変更しただけであり、他の判決を変更したものではない。したがって、無効審決が確定した後の取扱いについては従来の判決に従うものとみなすのが妥当であろう。これを要約すると、次のようになる。
今後、先願登録商標と類似性の高い後願登録商標の商標権者は、もし紛争が発生した場合、自分の商標の使用が無効と確定判決を受ける前でも、従来とは違い侵害が成立する可能性があるだけに、重大な事業展開に際しては、(1)敗訴時に発生する被害に耐え得るかどうかについて事前に検討し、(2)もしもの場合、相手の同意書を得ることができるかどうかなどについて綿密に判断して、なるべく大きな被害が発生しないように十分な注意を払うべきであり、それができない場合は、最初から紛争が発生する可能性が高い商標は、仮に登録されていたとしても使用しない方が安全であると言える。
 
 

 

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