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1.判決の要旨
2015年1月22日付にて韓国大法院は、「製造方法が記載された物の発明の特許要件を判断するにあたって、その技術的構成を製造方法自体に限定して把握するものではなく、製造方法の記載を含んで特許請求の範囲の全ての記載によって特定される構造や性質などを有する物として把握し、出願前に公知された先行技術と比較して新規性、進歩性などがあるか否かを検討しなければならない」と判示し、これに抵触する既存の判決を全部変更した。(大法院2011フ927事件の全員合議体判決)
2.判例の変更
従来、大法院は、「物の発明の特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載されているとしても、その製造方法によってのみ物を特定するしかないなどの特別な事情がない限り、当該特許発明の進歩性の有無を判断するにあたっては、その製造方法自体はこれを考慮する必要がなく、その特許請求の範囲の記載によって物として特定される発明のみをその出願前に公知された発明などと比較すればよい」という立場でした(大法院2009.9.24.言渡、2007フ4328判決)。すなわち、製造方法で物を特定するPBP(Product By Process)形式の物の発明の進歩性の有無を判断するにあたって、原則としてその製造方法自体を考慮してはいけないが、物自体が新しいものであってその構成を適切に記載し難い場合、製造方法に関する記載が物の性質や構造などを簡潔に表現するための場合などの例外的な場合に、その製造方法自体を考慮しなければならないという立場でした。
しかしながら、新規の大法院判決は、製造方法が記載された物の発明の特許要件を判断するにあたって、上記特別な事情の有無に関係なく、その技術的構成を製造方法の記載を含んで特許請求の範囲の全ての記載によって特定される構造や性質などを有する物として把握し、出願前に公知された先行技術と比較して新規性、進歩性などがあるか否かを検討しなければならないという立場を取ることにより、上記従来の大法院判例のような趣旨の判決を新規の大法院判決の見解に背馳される範囲内で全部変更しました。
3.新規の大法院判決の根拠
新規の大法院判決は、『PBP形式の物の発明の場合、製造方法が記載されているとしても、発明の対象は、その製造方法ではなく最終的に得られる物自体であるので、特許法に規定された発明の類型のうち「物の発明」に該当し、その製造方法は、最終の生産物である物の構造や性質などを特定する一つの手段としてその意味を有するだけであり、このような解釈は、生命工学や化学分野で構造や性質などで物を直接的に特定することが不可であるか困難であって、製造方法によってのみ物を特定するしかない事情がある場合にも同じである。』という点に基づき、PBP形式の物の発明の特許要件を判断するにあたって、上記特別な事情の有無に関係なく、その技術的構成を製造方法の記載を含んで特許請求の範囲の全ての記載によって特定される構造や性質などを有する物として把握し、出願前に公知された先行技術と比較して新規性、進歩性などがあるか否かを検討しなければならないという結論を下したものです。
4.従来の大法院判決と新規の大法院判決との比較
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関連特許要件 |
従来の大法院判決 |
新規の大法院判決 |
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新規性、進歩性など(特許法第29条など) |
原則:特許請求の範囲の全ての記載によって特定される物の物性、特性、構造などをもって新規性、進歩性などを判断する。 例外:製造方法によってのみ物を特定するしかないなどの特別な事情がある場合、その製造方法を新規性、進歩性などの判断時に考慮する。 |
特許請求の範囲の全ての記載によって特定される物の物性、特性、構造などをもって新規性、進歩性などを判断する。 例外なし。 |
5.新規の大法院判決の意義
上記新規の大法院判決は、製造方法によってのみ物を特定するしかない場合がよく発生する生命工学分野、化学分野、製薬分野、食品工学分野などの産業分野に示唆するところが大きく、今後、出願明細書にPBP形式の請求項を記載するか、PBP形式の請求項に対する新規性、進歩性などの拒絶理由に対応する際、特に留意しなければならないものと予想されます。
まず、出願明細書を作成する際、物の構成成分、構造、特性などによって物を特定できる場合、できるだけその構成成分などによって特定された物の請求項を記載することが好ましいです。たとえ、製造方法によってのみ物を特定するしかない場合であるとしても、後日審査の際に、物の新規性および進歩性を認めてもらうために、その製造方法自体ではない、その製造方法によって影響を受ける物の構造や特性に先行技術と差別化された特徴があるという点を重点的に強調できる出願明細書を作成することが好ましいです。
さらに、審査官がPBP形式の請求項に対して新規性、進歩性などの拒絶理由を通知した場合、従来には出願人が製造方法によってのみ物を特定するしかないなどの特別な事情およびその製造方法に先行技術と差別化された特徴があることを主張/立証して該当拒絶理由を克服できましたが、上記新規の大法院判決により、今後は出願人が製造方法によって特定される物の物性、特性、構造などに先行技術と差別化された特徴があることを主張/立証しなければ、該当拒絶理由を克服できなくなりました。
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