韓国の特許法改正案が2020年5月20日国会を通過し、2020年12月から施行される。
改正案の主な内容は、特許侵害に対する損害賠償の規定を特許権者に有利に改正するというものである。
現行の特許法で、損害賠償請求額は、侵害者が販売した侵害品の数量に、特許権者の単位数量当たりの利益の額を乗じて計算する。但し、特許権者の最大生産能力を、その限度としている。
例えば、特許権者の製品生産能力が100個の場合、侵害者が10,000個の侵害製品を市場に販売しても、特許権者は本人の生産能力(100個)を超えた9,900個の製品については損害賠償を受けることができない。
改正法が施行されると、特許権者は、これまで損害賠償を請求できなかった残りの9,900個についても、特許発明の実施に伴う実施料を侵害者から受け取ることができる。
これを簡略にまとめると、以下の通りである。
* (現行法) 特許権者の生産能力範囲×単位当たりの利益の額
** (改正法) (特許権者の生産能力範囲×単位当たりの利益の額)+(生産能力範囲の超過分×合理的実施料率)
損害額の範囲を拡大する今回の特許法改正と、昨年7月から施行している故意の特許権侵害に対する3倍賠償制度によって、特許侵害に対する損害賠償額は大きく増額されることが予想される。
一方、韓国特許庁は、特許侵害訴訟の過程で特許侵害および損害についての立証資料を特許権者がより簡単に確保できるように、韓国型ディスカバリー制度を導入することを進めている。