1.はじめに
大法院は、大韓民国の企業がアメリカなどの外国企業に支払った特許使用料に対する国内課税権を認める全員合議体判決を下した。韓米租税協約の解釈上、米国法人が韓国内で登録されていない特許権に関して支払われた所得は、国内源泉所得に該当しないという既存の法理を覆した初の判例である。
これにより、1990年代から30年以上続いてきた特許課税権をめぐる議論において、新たな判例が確立された。今後は、韓国の企業が外国企業の特許を国内で使用しても、国内の課税当局が税金を徴収できるという新たな原則が確立されたということである。国税庁は、現在関連する法理に基づいて進行中の「不服」関連の税額だけでも4兆ウォンに達し、その分税収が増加するものと見込んでいる。
2.事件の概要
半導体メーカーのSKハイニックスは、2011年に米国のA社から特許侵害訴訟を提起された。SKハイニックスは、米国でのみ登録された半導体特許約40件を使用する代わりに、5年間にわたり毎年160万ドル(約22億ウォン)をA社に支払う条件で合意および和解契約を締結した。SKハイニックスは、契約に従ってA社に特許使用料を支払い、SKハイニックスが所在する京畿道利川税務署に22万5千ドル(約3億1000万ウォン)の源泉徴収分の法人税を納付した。
その後、SKハイニックスは、「韓米租税協約により、本件使用料は国内未登録特許権に関するものであるため、課税対象ではない」として法人税還付を請求した。使用した特許が海外でのみ登録されているだけであって、国内には登録されていないため、国内源泉所得に該当せず、税金を納付する必要がないという趣旨である。
しかしながら、課税当局は、「特許が大韓民国に登録されていなくても、国内でその特許を使用して製造・販売したのであれば、税金を納付しなければならない」として更正請求を拒否した。SKハイニックスは、「外国特許を国内で使用したからといって課税するのは二重課税である」と主張し、当該処分の取り消しを求める本件訴訟を提起した。
3.法院の判決
第一審と第二審の法院は、いずれも国外特許の使用料は国内源泉徴収の対象ではないとして原告側の主張を認めた。特許権は、登録された国以外では侵害され得ないため、使用の対価を支払うということ自体がそもそも想定できないという従前の大法院判例に従い、国内未登録特許権に対する本件使用料は、韓米租税協約などを根拠に国内課税対象ではないという趣旨である。
ところが、第三審である大法院全員合議体は、このような判例を33年ぶりに覆した。国内に登録されていない特許技術であっても、国内で製造・販売などに使用するための対価であれば、それは国内源泉所得に該当するとの判断である。大法院は、「本件使用料が単に国内未登録特許権に対するものであるという理由だけで、その特許技術が国内で事実上使用されたか否かを検討することなく、国内源泉所得に該当しないとした原審の判断には、関連する法理を誤解して必要な審理を尽くしておらす、判決に影響を及ぼした誤りがある」と述べた。
4.終わりに
国税庁は、今回の大法院判決により国家財政の拡充効果を期待している。韓国企業による特許使用料の支払いは、今後も続くため、長期的には数十億ドルの税収効果が発生するということである。
今回の大法院判例の変更により、今後、韓国企業と特許ロイヤリティ契約を結ぶ際には、関連する税金の納付方法について綿密に検討する必要があると考えられる。